アイソメ理論
「ラズ、大丈夫だから」
キサの大きな手があたしの背中を優しく撫でる。
「息荒くなってる…落ち着いて」
耳に心地よい低音の声と共に落ちてくる、ゆったりとした接吻。
絶えず角度を変えて、優しく慈しむように
何の手入れもしていなくて、乾燥で傷んだ唇が潤滑を取り戻す。
熱く吐息が溶け合う頃に、キサは唇を離して安心した微笑みを表情(かお)に出した。
「…はい、戻った」
何度経験しても毎回照れ臭くて、ぎこちなくあたしも笑った。
…ありがとう。
「キサにはいっつも助けられてばっかりだね」
「…いーの、俺がしたいだけだから」
そう言って
まだ熱の引かないあたしの唇を撫でたキサが、例えようのないくらい愛しかったの。