贅沢なリング
「気に入らない?」
啓太はそう言うけれど、私がこれを気に入らない訳がない。
そんな事、顔を見れば分かるくせに、言わせたいのだから狡い。
「ううん、嬉しい、すっごく」
不謹慎だろうか。
元彼とお揃いのペアリングなんて。
そうしてそれが、こんなにも嬉しいなんて。
「よかった。杏奈の幸せを願って作ったから。男よけにもなるし。彼氏にも安心してもらえる」
啓太のそんな言葉に、私は思う。
これで私は守られるのだ。
かつて愛した男と、今愛している男に。
何て贅沢なんだろう。
「けど、お揃いって事は二人だけの秘密」
悪戯な笑顔に、私の顔も綻ぶ。
「ありがとう、大切にする」
私はほんの少し重くなった左手の薬指を、力強く握った。