お嬢様の秘密Ⅱ
「じゃあもし私が後継者争いに負けたら………帰る家すらなくしちゃうの………?」


会長はユリには絶対にそんなことはさせないはず。


ユリの泣きそうな目を見ていると何故だか無性に不安になり、私はユリの手を無意識にギュッと握った。


「そんなことさせない……。お義兄様たちも一緒に戦っているのよ、ユリが生まれる前からずっと。」


「お母さん………?」


「ユリ、本当はこんなこと起こってほしくないんだけど。

もし、“秋本”で立場が悪くなったら“山岸”姓を名乗って………。これが私が一番言いたいことよ。」


秋本にはかなわないけど山岸もいい武器にはなる。


「でも………。」


「大丈夫よ。お父様ともよく相談してユリに伝えたんだから。でも山岸の孫娘であることは伏せてね。」


「わかった。学園に戻る時には秋本家だってことだけを主張する。」


「お願いね。もし事件とか警察沙汰になりそうだったらお父様に直接通報して。」


私はお父様の携帯電話の番号を書いて渡した。


「………警視総監じゃなかったっけ?私が電話しても私のことわかるの?」


そういえばお父様とは面識がなかったかしら。


「広大さんに頼んで連絡が繋がるように手配すればいいわ。」


「分かりました。」


ふと壁際に視線をやった。


「6時50分だわ。ユリ様参りましょうか、葵様が首を長くしているでしょうよ。」


「………そうですね、行きましょうか叔母様。」


初めて“叔母様”と呼んだユリは切なそうに笑った。


-沙那side end-
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