お嬢様の秘密Ⅱ
「もちろん俺のささやかに持ってる権力を使って止めたよ。それから兄貴のように慕ってくれたんだ。けど………。」


そういえば無理して笑っていたユリが急に自然に笑っていた日があったかもしれない。


「ユリがいとこだったって知ったのは俺が裃に入学することになってからだった。

志穂とお見合いして、志穂からユリの話が出てきた時には本当に驚いたよ。」


志穂ちゃんならユリの素性を少しは聞いているはずだもんね。


「ユリは………こんな純粋に育てた沙那叔母さまに感謝だけどこの性格は……。」


「この世界には耐えきれないってことですか?」


「そうかもしれない。みんながみんな、過保護なんだ。育ちが特殊、才能もあり頭も良くて運動神経がいい。

みんなに分け隔てなく優しくできて………汚れを知らないお嬢様。

でもユリはこの学園に来て少しずつ強く成長しているのかもしれないね。」


「後継者争いに加わるって聞いた時は本当に驚きましたよ。」


みんなを守りたいって………そんな優しい理由で。


「俺がもっと運動神経よかったら山岸の警察の方を継げるんだけどな……。でも会社を継ぐのもまた大事だし。」


山岸ホールディングスはそこそこ大きい会社で、今急成長中。


「現在の警視総監と山岸家に繋がりがあることをほとんど知られていないからちょうどよかったかも。

もしかしたらシルバー様はそれも見越していたのかもしれないけど。」


「志穂ちゃんを守るってことですか。」


「かもね。桜井家のご令嬢だってことを知られないようにしているし、山岸って今そんなに権力を持たない企業だから。」


志穂ちゃんは巻き込めない………


そんなことをユリは行っていたかもしれない。
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