お嬢様の秘密Ⅱ
数日後、私はユリを呼び出した。


「以前は来れなくてすいませんでした。亮治さんに連絡をいただいたのに。」


………泣いた跡がはっきりと分かる。


もともと表情が薄い子だったけどさらに表情を消してしまったように見えた。


葵はどういうつもりなのかしらね?


「いいのよ。私もその時忙しかったからちょうど良かったかもしれないわ。」


ユリはほっとした様子で胸を撫で下ろした。


「それで、どういったことで……?」


なんで呼ばれたかわからないという表情でそっと尋ねてくる。


「これを渡したかったのよ。何としてでも直接ね。」


お父様にもらった書類の束とそれに関する裏付け資料を一緒に渡した。


内容を見たユリは目を丸くした。


「…………まさか聞いていらっしゃるの?」


「…………なんのことかしら。ただお父様に言われてあなたに渡したまでよ。」


「そう、ですか………。」


本当に何がしたいのかわからない。


お父様だって知らないはずなのにどうして欲しい資料が分かったのかしら?


お義父様つながりかしらね?


「…………有効に使わせていただきます。それとひとついいですか?」


「何かしら?」


ユリの黒い瞳はまっすぐ私の目を射抜いてきた。


「真理亜お姉様は被害者ですわ。恵梨香さんの。」


では、と軽く会釈して自ら扉を開けて出て行った。


私はしばらく放心してしまった。
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