お嬢様の秘密Ⅱ
「誠ちゃんには慌てて伝えられたらしいから詳しいことは知らないと思うわ。


私は会社の休憩時間になってから会社の近くのカフェに行ってみようと思って行ってみたの。


多分誰も私についてきていないと思うわ、私がいらないと言ったから。」


お袋が会社を出ることはめったにない。


「なんで会社の中のカフェに行かなかったんだよ?」


「だって最近話題のカフェだから行ってみたくなって....。で、ひとりでお茶してたら私に挨拶をしてきてくれた子がいたの。

『秋本奈々子様でいらっしゃいますか?』とね。」


お袋はパーティーに時々参加するから知られていてもおかしくはないな....。


「女の人だったわ。その人を払ってしまったら目立ってしまうと思って警戒しながらもお茶をご一緒してたの。

でも、私がお手洗いのため少し席を立ってすぐに戻り、お茶を飲んだ時に....。」


「噎せてしまわれた....。ということですか?」


「そう。そして急に意識が遠のいていつの間にか病院へというわけ。ガンの件は意識が遠のいた原因を調べるために、もともと持っていた持病と関係があるのかとかを調べた時に発覚したの。


私はもともと体が弱いからね....。いつかガンも発覚してしまうのではないかと思ってしまったの。」


女の人.....。


なるほど、お母様は誰でも気さくにお話される方だから女の人とかだったら特に同席を頼まれて断る可能性は低い....。


「奈々子....。お前は警戒心を持てって昔から言っているだろう....。」


「ごめんなさい。可愛い子だったから断りきれなかったのよ...。」


ーコンコン


「大変申し訳ございません。旦那様、そろそろお戻りになりませんと....。」


病院へ来たのはお昼頃だったが今ではすっかり暗くなっていた。


「すまぬ、また明日来る。」


「無理しないでね。大樹ももう帰りなさい。」


「はい....。」


「それと。大樹、気になっている子と今度会ってみたいわ。頑張ってね。」


「おう、お袋。」


初めてくだけた挨拶をすると、お袋はとてもキラキラした笑顔を見せてくれた。


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