お嬢様の秘密Ⅱ
「ユリ………起きろ。」


ーんんっ


「ここは………どこ………?」


「空の上だ。」


「え!?」


ガバッと起きるとヘリはとっくに離陸していた。


「無防備に寝てたな。緊張して疲れたのか?」


「まあ………そんなところよ。無防備って………誰も私なんか襲わないんだから大丈夫よ。」


「まさかの無自覚かよ…………」


「なんか言いました?」


「いいや。何も。」


それから数分の間静かな時が流れた。


「………そろそろ着きますから。」


そう言うと、竜也さんは静かにヘリを着陸させた。


大樹のエスコートで私はヘリから降りた。


「竜也、少し席を外してくれ。莉依紗に大事な話があるんだ。」


「かしこまりました。」


そう言うと竜也さんはどこかへ消え、誰もいない学園の庭園で2人っきりになってしまった。







「俺な…………フランスに戻ることになった。」






え…………


「なんで………。」


「さっき連絡があって親父が倒れたんだ。」


「大樹のお父様が…………!容態は??」


「ああ。大事には至らなかったから大丈夫だ。ただ最低でも3年ほどは仕事を代わりに引き受けなくてはならないんだ。

俺は一人っ子で…………次期後継者としての責任があるから。」


大樹の目は強い光を宿していた。


「フランスに………行っちゃうんだね………。せっかく…………打ち解けられる男の子がいるって思って嬉しかったのに………。」


一度私がクラスの女の子に呼び出され、バケツで大量の水をかけられて反撃しようにも出来なくて泣いていた時、大樹は助けてくれたんだ。


ーお前らそれでも令嬢か?ーって冷酷な声で。


「助けてくれたお礼………出来てない。」


それから私に対していじめがいっさいなくなり、えりーの婚約発表前だったから、“庶民のくせして大樹様に助けられてる。ムカついてもあいつはやめておけ"って噂が流れたくらいだ。



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