お嬢様の秘密Ⅱ
あれよかれよと着替えさせられ、雷也の運転するリムジンに乗せられ……


気づけば最先端治療で有名な大病院に着いていた。


「どうして病院なのかしら。」


私、あのメイドさんたちに張り切られてまあまあ落ち着いている色のワンピース着せられたわよ。


まだ3月中頃で寒いからボレロも羽織っているけど。


「山岸莉依紗様ですね。すでにお名前は通されていますのでどうぞお通り下さい。」


「分かりました。では莉依紗様、ご案内いたしましょう。」


私名前を通したことないのだけど………


案内されたのは最上階にある高そうな個室だった。


「ここ………?私が入っても良さそうなところに感じないのだけど………。」


「ご安心を。」


雷也がドアを開けてくれた。


広い個室の一角にあるソファにとても綺麗なシルエットの女性が紅茶を飲んでいらっしゃった。


「奥様。お久しぶりでございます。イギリスから帰国した雷也です。」


「大きくなったわね。風格も出始めているわよ。兄貴そっくりね。」


「ご冗談を。私は兄貴には全く歯が立ちませんよ。………して莉依紗様をお連れしました。」


この女性…………私会ったことある?


「莉依紗さん、近頃体調が優れないとお聞きしております。どうぞお掛けくださいな。」


「は、はい……………お母様。」






え?


私なんで今“お母様”って………





頭にかかっていた靄がスッと晴れて行く気がした。


「思い出したわ…………思い出した。大樹のお母様。そして今までにあったこと全て思い出せるようだわ………。」


思い出した途端急に涙が溢れて止まらなくなった。


「不安だったでしょう。もう大丈夫よ………。」


お母様は私を抱きしめ引き寄せて背中を撫でてくれた。


「学園内でのことは私も聞いているの。だから私も何か協力したかったのだけど………。」


「まさかほとんどの記憶を思い出せるとは………奥様はすごいですね。」


「いいえ。私じゃないわ。莉依紗さんは私を通してあの子を見たんじゃないじゃないかしら。でも良きにしろ悪気にしろ協力できてよかったわ。」


私の背中をポンポンと叩いたお母様。


「大樹にあえばすぐに思い出したのかもしれないわね………。」


あの子ってあなたに対して心配性なのよ、と教えてくれた。


「そうですか?大樹は海外へ戻る前に私にお母様を頼むと言っていましたよ。」


まあ、と目を丸くして驚いていた。


「意外だわ………。」


ふっとどこか遠くに目線が行っているように見えた。



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