お嬢様の秘密Ⅱ
その翌日。


私たちに見守られながら………大樹のお母様は静かに眠った。


お母様のご意向で葬儀は仲の良いもので行われた。


お母様は学生時代よく通っていて好きだったという花畑に来ていた。


今は遅めのコスモスが綺麗に咲いている。


「なんだかここにいるとお母様が近くにいるように感じるわ……。」


「ああ……お袋は実家の庭にもコスモスを植えていたな………。」


庶民出身であったお母様は苦労されていて心労も重なっていたのかもしれない。


でもそれを表に出さず接してくださったと思うと………。


「ねえ大樹。」


「どうしたりい?」


「もし………恵梨香の子が大樹の子でも………私、許せるかもしれない………。」


「違う………1時間一緒に寝たくらいで………。」


「私は大樹を信じてる。でも本当だったら………。生まれてくる子に何の罪はない。」


大樹は私の言葉に目を丸くした。


「そう………だな………。」


「お母様だったら許すと思う。…………大切な命なんだもの。」


「りいはお袋に似てきたな………。」


そう言って私の髪を撫でようとした手が止まった。


教室で恵梨香ともめてから1度も私の触ってこない。


………しょうがないな。


私は………大樹の顎をくいっと下げて触れるだけのキスをした。


「大樹………お願い?」


「お前………またテクニック増やしたのか………。」


私たちは久しぶりにお互いの距離を縮め直すためのキスをした。
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