erosion
「えー皆さん、新しい学年になりましたね。私は此のクラスの担任の…」
もうすぐ受験を控えた高校生だというのに、クラスは馬鹿騒ぎ。かき消される新任の女性教諭の声。
「なぁなぁ、悠。あの子だよな。噂のお姫様」
「姫?」
斜め後ろの席に居た友人につつかれ、指差す方向を見ると、其処に居たのは冒頭で長々と紹介した彼女だった。
「あ…あの子」
「知り合いか?」
「んな訳ないだろ」
「だよなー。だって綺麗過ぎて高嶺の花って感じでさ、近寄り堅いし。」
「うん…」
確かに、俺のような平々凡々の容姿では太刀打ち出来ない美少女だが。
「可愛いよなー。あ、でも」
「ん?」
「あそこ、見てみ」
斜め後ろに向けて居た視線を彼女の方向へ再び向けると、先程は見なかった人影が彼女を取り囲んでいた。
「あの子、ギャル系の女子から苛められてるらしいよ」
「うわぁ…」
女は恐ろしい。
何も悪い事をしなくても、ただ自分の自尊心や下らない何かを満たす為だけに人を傷付ける。
「あんなに可愛いからな。嫉妬されるだろ」
「な。」
適当な返事を返して、耳を彼女と囲む女達に傾けた。