元カレストーカー
「さむい……」
一人用の布団を私に預けてしまった彼の寝起きは、私の体に手を這わすことから始まる。
「あのさー、いい加減にしてくんないかな。別れてんだよ、いちおー」
「俺は君を嫌いになってない」
「自分勝手」
「今彼と不満があるくせに」
「ないよ」
「それでも俺よか、あいつ下手そうだし。君の声量(なきごえ)、イマイチだったからね」
「盗聴か……」
部屋のどこに仕掛けたんだか、後で探しておこう。
「私も、また面倒な男に引っかかったな」
「そうだねぇ。あいつ、君以外にも女いたみたいだし」
「男見る目ないな、本当にもー」
嫌味を天然カウンターしてくる彼の頬をつねる。
痛そうな顔。でも私との接点ができたと、抱き締める腕を更に強く。
「離れようが、また会えばそれでいい」
死んでも離れないような男は、一人じゃ寒いと私を抱くのだ。