orange
orange
窓から差し込む夕陽が2Aの教室をオレンジに染める。ここだけ別世界みたい。
目を閉じればあの頃をすぐに思い出せる。
けれど、もうあれから随分時間が経ったんだよね。
「三月」
ほら、振り返る櫂くんは、もう17歳の櫂くんとは違うでしょう?
――久しぶりに高校時代仲のよかった面々で集まることになった。近況を話すうちに母校に行こうという話になり、思いつきのまま足を向けた。二人はぐれたのは偶然だったか。
「櫂くん」
私の名前を呼んだきり、櫂くんは教卓に腰かけ黙ってしまった。ドア付近に立ったままだった私は、櫂くんの真正面に移動した。ああ、あの頃はこんなに真っ直ぐ櫂くんを見ることがあったかな。
「どうして私にキスしたの? ここで」
あの頃は聞けなかったこと。
櫂くんはどういうつもりだったのかちゃんと聞きたかった。今なら聞けると思った。
櫂くんはじっと私から逸らさない。
「したかったから」
躊躇わず発された言葉に、え、と漏らす。
「それだけ?」
「他に理由いる?」
――私はあの頃、2Aで彼氏の部活が終わるのを毎日待っていた。そこでその時間、彼氏の友達である櫂くんとキスするようになったのはいつからだったかな。
目を閉じればあの頃をすぐに思い出せる。
けれど、もうあれから随分時間が経ったんだよね。
「三月」
ほら、振り返る櫂くんは、もう17歳の櫂くんとは違うでしょう?
――久しぶりに高校時代仲のよかった面々で集まることになった。近況を話すうちに母校に行こうという話になり、思いつきのまま足を向けた。二人はぐれたのは偶然だったか。
「櫂くん」
私の名前を呼んだきり、櫂くんは教卓に腰かけ黙ってしまった。ドア付近に立ったままだった私は、櫂くんの真正面に移動した。ああ、あの頃はこんなに真っ直ぐ櫂くんを見ることがあったかな。
「どうして私にキスしたの? ここで」
あの頃は聞けなかったこと。
櫂くんはどういうつもりだったのかちゃんと聞きたかった。今なら聞けると思った。
櫂くんはじっと私から逸らさない。
「したかったから」
躊躇わず発された言葉に、え、と漏らす。
「それだけ?」
「他に理由いる?」
――私はあの頃、2Aで彼氏の部活が終わるのを毎日待っていた。そこでその時間、彼氏の友達である櫂くんとキスするようになったのはいつからだったかな。
< 1 / 2 >