ショートコメディの世界




マンションの私の部屋の階下の部屋から、火が上がっていた。


空気は乾燥していて、火のまわりは思ったより早く、私の部屋もすぐに焼き尽くしそうな勢いだ。



マズイ!私の高麗人参がっっ!



私は全速力でマンションの非常階段へ向かって走っていったが、途中で消火作業中の消防士に羽交い締めにされた。


「危険です!中に入らないで下さい!」


「放してくれ!中には私の大事な高麗人参があるんだっ!」


「諦めて下さい!もう、今からでは無理ですよ!」


「そんな簡単に諦められるかっ!
あそこまで育てるのに何年かかってると思っているんだ!」


「今からあの部屋へ入るのは無理です!
アナタ死んでしまいますよ!」


「だからどうした!
健康の為なら、命なんて惜しく無い!」


「アンタ言ってる事がおかしいだろ!」





結局……消防士達に阻まれ、高麗人参を救い出す事は出来なかった。


高麗人参は水の加減が重要なのだ。
あんなに水びたしにされては、根が腐ってしまう……


私は、なにもかも失ってしまった。


住む場所も、健康も、そして高麗人参も……



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