ショートコメディの世界




「だいたい、俺はこっちの方から音が聴こえた気がするんだよな!」


「そう、そう!そっちの方から聴こえたぞ!」


「だとしたら、櫻井常務、相葉部長、中居部長の辺りだな……」


「やっぱり中居部長、アンタじゃ無いのか?」


「冗談じゃ無い!
社長は殺しても、屁をこいたのは私じゃ無い!」



「・・・えっ?」



一瞬、場内の空気が沈黙に包まれた。



「社長殺したの、キミだったの?」


「ま、まあ~ぶっちゃけ私です……」


残る六人の容疑者の視線が、一斉に中居部長へと注がれる。



ところが……




「ふ~~ん………まぁ、今更そんな事はどうでもいいが……それより屁をこいた真犯人は……」


「ちょっと!どうでも良くはないでしょう!」


堪らず、全田一が口を挟むが……


「いや、全田一さんどうでも良いですよ。あのワンマン社長が代われば、この会社も今よりはもう少しマシになるというものだ」


二宮専務のその言葉に、他の六人も大きく頷いて賛同する……殺された大野社長は、社員達によほど嫌われていたらしい。


もはやこの七人にとって、社長殺害事件の事など全く眼中に無いと言ってよかった。


しかも、中居部長があっさりと自白してしまった今となっては、全田一の存在理由は無いに等しいものとなってしまった。


「じゃあ~中居部長が屁をこいたと思う人~~~」


「は~~~い」


「勝手にやっていて下さい!
私は帰ります!」


ほとんど無関心のこの状況に、全田一もさすがにキレてしまった。


「おや、お帰りですか全田一さん?
それじゃ前田君、タクシーお呼びして」


「結構!」


全田一は、とても憤慨した様子で応接室のドアを乱暴に閉め出て行ってしまった。



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