スーツを着た悪魔【完結】
「わぁ、すごい……」
それから向かったカラオケは、まるでホテルの一室のような、かなり豪華な施設だった。
大きなテレビ、十人以上座れそうなソファー。
安物ではない雰囲気の調度品。
さらにまゆが高校卒業後から今でも住んでいる、1Kの部屋がいくつも入りそうな広さで、豪華マンションにしか見えない。
ミカが言うには芸能人御用達で会員制。一見さんお断りなんだとか……。
いったい一時間いくらするんだろう……。
割り勘でも払える気がしないんだけど……。
「ここ、彼が予約してくれてたんですよっ♪」
田舎者丸出しでバッグを胸に抱えて部屋をボーッと見渡しているまゆに、ミカがそっと耳打ちする。
「彼? ミカちゃんの彼氏?」
「やだー! 違いますって、さっき言った~」
「ああ……あの……獲物、さん……その人が、会員なのね?」
その彼がここにいるわけではないけれど、なんだか気まずくて『獲物』という単語だけ小さくなってしまった。
「そうです。もうすぐ来ると思いますよ! はい、まゆさんも座った、座った!」
慣れた様子で部屋の中央に設置してあるソファーに座り、アルコールを注文するミカと友人たち。