スーツを着た悪魔【完結】

なんてことだ。付き合い始めが肝心なのにどうやら兄は完璧な恋人ではないようだ。まゆさんは優しそうだから、きっと我慢しているに違いない。


未散はここは自分の出番だろうと、二人をしっかりと見つめる。



「なんだか二人に距離を感じるけど……ちゃんと彼女のこと大事にしてる?」

「当たり前だろ? ただ……まゆは恥ずかしがり屋なんだ」



未散の批難じみた声に、そこでようやく深青はまゆの手をとり自分の腕にからめた。


まゆはいきなり手をつかまれたことに一瞬驚いたけれど

「は!? はい、はい、そうです。今日はちょっと緊張しちゃって……」

と、それっぽく誤魔化した。



「ふぅん……」



けれど彼女のまっすぐな瞳の前で嘘をつくのは難しい。

そのまま避けるように、視線をつま先に落とす。


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