スーツを着た悪魔【完結】
そもそも未散の指摘は正しいのだ。
私と彼との間の距離は最初からうんと遠いのだから。
ただ、ここはちゃんと恋人らしく振舞わなければいけない。
そういう約束をしたから……。
深青の腕に乗せた手のひらに力を込めると、意外に力が入ったのか、深青はまゆを見下ろす。
その眼差しは澄んでいるけれど、同時に燃えるような輝きを放っていた。
「あ……」
何か間違ったのだろうかと手を引き抜こうとすると、手の甲に深青の指が触れた。
「いい、そのままで」
低い声。甘く響く声。
そしてそのまま、指先でそっと筋をなぞる。
痺れるようなその声と、眼差し、指先に――
まゆは背中からどっと汗が噴き出したような気がした。
それから起こる、甘い陶酔。