スーツを着た悪魔【完結】
美しい人を見慣れているに違いない深青の鼻をあかしてやりたいと思ったくせに、ここに来てまず一番に衝撃を受けたのは、未散と深青の堂々とした佇まいだった。
遠くから見ていても、あの二人は違う世界の住人だった。そこで完成された世界だった。
かなり目立っていたけれど、二人はそんな視線にはまったく気づいていない風にとても自然に振舞っていた。
もし私が彼らのような立場なら、きっとソワソワしてしまうに違いないのに……。
どうやってバランスを取っているのかと不思議になるくらい、細く高いヒールを履いていてなお、美しく立つ未散。そして板についた深青のエスコート。
付け焼刃で美しく装ったところで、自分はこの程度なんだと思い知らされた。
勇気を振り絞って二人に近づいた自分をほめてあげたいくらいだった。
なのに私ったらおいしいチョコレートケーキを食べて、チョコつけっぱなしだなんて……恥ずかしい。ああもうやだー!
「ねえ、まゆさん。二人はいつもどんなデートしてるの?」
「――はい?」
そうやって、ひたすら反省していたまゆに、また未散が爆弾を放り投げる。