スーツを着た悪魔【完結】
「ありませんけど……」
「行先はお前に任せるよ」
「まかせるって……」
「悪いけど、俺、昼間にデートしたことないから」
「――」
「だからお前に任せる」
そして面倒くさそうに目を閉じる深青。
それ以上何も言えなくなって、まゆは口をつぐんだ。
そんなにメンドクサイなら、デートなんか「映画を観た」とか「ウィンドウショッピングをした」とかで誤魔化せばいいのに……。
そして一方深青は、いくら最愛の妹に言われたからって、どうして俺はまたこいつと出かけようなんて思っているんだろうと考えていて――
成り行きで、暇つぶしでなんとなく。
ただ、それだけか?
いつもは弱弱しいくせして、何かのスイッチが入ると深青が気おされるような強さを持つまゆ。
決して100%自分の思い通りにはならない女だ。
なのに――
もっと同じ時間を過ごしてみたいと思ってるんじゃないか?
あり得ないと思うような、一つの可能性に行きあたって、酷く不機嫌になっていた。