スーツを着た悪魔【完結】
「もしかして仕送りとかなかったの?」
「うん」
「で、アルバイト? 偉いねー! 俺、親から毎月20万仕送りしてもらってたけど、全然足らなかったのに!」
あっけらかんと言い放つ男。
「……」
思わず絶句するまゆ。
仕送り20万!?
20万円ももらってどうして足りなくなるの?
今のお給料より断然多い額に、一瞬息が止まりそうになる。
ああ、やっぱり、住む世界が違いすぎるかも。
ミカちゃんには悪いけれど、ここで適当に切り上げさせてもらって帰ろう。
と、腰を浮かしかけた瞬間。
「あ……! 来たーーーー!!!!!」
「豪徳寺さん!」
「きゃーっ、待ってましたー!」
女の子たちの黄色い歓声が響き渡り、それまでノリノリで流れていたカラオケの映像が止まる。(どうやら女の子の仕業らしい。マイクを握っていた男の子は、歌うのをやめざるを得なかった)
「お待たせ。遅れてごめん」