スーツを着た悪魔【完結】
そうだ。それが俺の本心だ。
「まゆ」
真面目な顔をして、自分を見上げる彼女を見下ろす。
「そもそもこうなったのも、もとはと言えば俺が未散に嘘をついたせいだ。すまない」
「そんな……」
「家族にはよくたしなめられる。お前は衝動で動きすぎる。もう少し人の気持ちを考えろと。時々反省するけど、すぐに忘れるんだ……わざとじゃない」
あまりにも正直すぎる深青からの告白を黙って聞くまゆ。
彼の言葉を100%信じていいものかと迷ったのは一瞬だった。
深青が衝動で動く、というのは、確かにそうかもしれなかった。
元々、彼のことを理性的で、穏やかな紳士だと思い込んでいたけど、本当の彼はこうなのかも。
だからいきなり切れたり、キスしたり……
妹さんに言い訳するためだけに、私と付き合ってるなんて嘘をついたりして。
男としては演技をしていた深青のほうが100倍モテるだろうし、頼りになるんだろうけど――
なるほど、彼も普通の人、というか、完璧な男ではないのだと、改めて考えると、「最低、最低!」と腹を立て続けるより、少しだけ心が休まった気がした。