スーツを着た悪魔【完結】

復唱されて、頬に熱が集まった。



「深青は知らないと思うけど、庶民のお弁当には必須なの!」

「お前俺のことなんだと思ってんだよ。毎日フレンチ食ってると思ってるのか?」

「――思ってる」

「馬鹿。唐揚げも卵焼きも食うっつうの。頂きます」



丁寧に手を合わせ、一緒に入れていたウェットタイプのナプキンで手を拭き、アルミホイルで包んでいたベーグルにぱくりと食いついた。


そうか……毎日高級食材食べてるわけじゃないんだ。


たくさん作ったはずのおかずもドンドン減っていく。

フレンチを食べていた時はとても上品で気おくれするほどだったのに、今目の前にいる深青は、御曹司ではなく普通の男に見える。

普通というにはかなりの美貌なのだが……。



「お前、食べないの」



深青がちらりとまゆに視線を向けた。



「食べる……食べるよ。せっかく作ったんだし」



慌てて答え、まゆはベーグルに少しだけかじりついたが――飲みこむのにかなりの時間がかかった。




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