スーツを着た悪魔【完結】
なんだか胸がいっぱいだ。
深青のこと、死ぬほど腹が立ったし、最低だって何度も思ったけど……楽しい。
デート。嘘のデートだけど、きっと人生最初で最後。だけどこれが最後でよかった。楽しかったもの。
「天気、よくてよかったね」
「そうだな」
季節は春だった。ぽかぽかとした日差しが気持ちいい。
「ふぁ……」
可愛らしく、小さくあくびをするまゆ。
眠い。お弁当を作るために朝5時に起きたから……
眠い……。
緊張がほどけて、ホッとしたせいかもしれない。
「――まゆ?」
遠くから深青の声がしたような気がしたけれど、すぐに何も聞こえなくなった。
――――……