スーツを着た悪魔【完結】
どこか面白くなさそうな、複雑な表情をする男の子たち。
どうやらミカのいう『獲物』がご到着のようだ。
「音楽、止めなくていいのに」
柔らかくて品のある声が静かになった部屋に響く。
彼は苦笑しながら、部屋を見回している雰囲気だ。
「こっちに座ってくださいっ♪」
「ありがとう」
はしゃぐミカに応えるように、その人が動くと――
まゆの鼻先で、すみれ、アイリス……静かで上品な香りが漂った。
その瞬間。まゆの体は雷に打たれたように打ち震えていた。
私はこの「香り」を知っている――。
昔こぞって、皆が同じものを欲しがった、決して同じものが二つとない、彼自身の香り。
そういえば、さっきドアが開いた瞬間、誰かが彼の名前を口にした?
いや、まさかそんな――
心臓がドキドキと鼓動を強める。