スーツを着た悪魔【完結】
「まゆ……?」
「ひっくっ……」
「どうして泣くんだ……」
どうしてもこうしてもない。
彼のお遊びに付き合ってしまった自分が情けなく、人生三度目のキスも許してしまった自分に、心底ガッカリしたからだ。
彼と私の気持ちは違う。同じ気持ちじゃない!
って……同じ――?
同じって……どういうこと?
降って湧いてきたようなその思いに戸惑うまゆ。
「――まゆ、とりあえずここじゃなんだからちょっと移動しよう」
そして深青は深青で激しく混乱しながらも、とりあえず手早く荷物をまとめ、まゆを立たせると、彼女の手をしっかりと握って歩き始めた。
「離してっ……」
「嫌だね。離したらお前、どっか行きそうだから。今は余計怒らせるんだろうなって分かってるけど、離さない」
「――ッ……」
偉そうな態度の深青にカチンときながらも、結局まゆは深青に引きずられるように歩かされて――。
「これって……」
「とりあえず中で話そう。ゆっくり15分あるし」
深青はまゆの肩を抱いて、そのまま観覧車へと乗り込んだ。