スーツを着た悪魔【完結】
クラクラする……。
この狭い空間で目を閉じたところで、やっぱり深青を感じないわけにはいけないのだけれど、まゆは強い陶酔の中、息をひそめるように目を閉じていた。
ドキン、ドキンと、高鳴る鼓動。これは自分の心臓の鼓動なんだろうか。
背中から包み込まれるように抱かれると、この熱が自分のものなのか深青のものなのかわからなくなる。
「まゆ」
後ろから耳元でささやかれて、体がぞくりと震えた。
彼は自分の声の威力をわかってこうしているんだろうか。
そして彼の香りが、人を惹きつける強い魅力があることも――
「さっきのキスのとき、一応俺、お前の意思を確認したつもりだったんだけど……」
「――」
唇が震える。
「お前、俺にキスされるの、本気で嫌だった?」
「――」
押し黙るまゆ。