スーツを着た悪魔【完結】
「もう、こんなことしないでね。したらまたゲンコツだからね!」
「――」
冗談ぽく笑えた自分をほめてあげたい。
深青の手の力が一瞬緩んだのと同時にまゆは立ち上がり、最初に深青が座っていた席へと移動する。
自分に向けられている視線には気づかないふりをして、また窓の外を眺める。
二人の距離はまた元に戻ってしまった。
――――……
「あそこのコンビニで大丈夫だから」
「ああ」
深青はうなずいて、迎えに来た時と同じコンビニの駐車場に車を停車した。
日はすでに落ちていて、コンビニの明かりだけが煌々と眩しい。
「ありがとう」
「――」
シートベルトを外して、まゆはぺこりと頭を下げる。
そんなまゆをじっと見つめる深青。
どうして俺の目を見ないんだ、こいつ……。