スーツを着た悪魔【完結】
青春時代をほぼ海外ですごした深青だが、3つ年上の頼景は、深青の家に下宿する形で留学し、同じ時間を過ごして家族同然だった。
だが今さら自分の悩みを打ち明けるつもりもない。
つい先日話して『らしくない』と言われたばかりだし、そもそも男同士で恋愛相談なんてゾッとする。聞いてほしいことでもない。
「――じゃあ」
「待てよ、深青」
食事を終えた別れ際、頼景が車を呼ぼうとした深青を呼び止めた。
「ん?」
「今度、例の『まゆ』に会わせろよ」
「はあ?」
「じゃあな」
頼景はぽかんとした表情の深青を置いてけぼりにし、タクシーを呼び止め乗り込んでいった。
まゆに会わせろって……
それ以前に俺がまゆに会ってないというのに。
やはり親友に隠し事は出来ないなと、苦笑いするしかない深青だった。