スーツを着た悪魔【完結】
と言うわけで、深青は十日ぶりにOrlandoに姿を現した。
「――澤田さんは?」
ある程度の仕事を終え、コーヒーを運んできた事務一般を担当している阿部に尋ねると「おつかいに行ってもらってます」とのことだった。
「そう……。どう? 彼女の働きぶりは」
「ええ、とても真面目で、よく気が付きますよ。ちょっと頑張りすぎじゃないかって思いますけど……いっそ社員で雇われてはどうですか?」
「そうですね。考えておきます。今度話してみましょう」
うなずいておいて、そうか、その手があったと気が付いた。
今夜にでもまゆに連絡してみよう。
とりあえず話すきっかけにはなる。
「あら、雨ですよ」
阿部の言葉に窓の外に目をやった。
確かに窓ガラスにぽつぽつと水滴が落ちている。
「澤田さん、傘を持ってなかったけど、大丈夫かしら」
――――……