スーツを着た悪魔【完結】
――――……
それまで晴天だったはずの空が、急に鉛色に変わり、あっと思った瞬間、アスファルトにポツポツと雨粒が落ち始めた。
雨だ……!
まゆは書類を濡らさないよう慌てて腕の中に抱え込み、小走りになる。
どうして雨が?
予報ではそんなこと言ってなかったのに!
いまいましく思いながら、並ぶビルの影で雨を避けながら走り続けたけれど、もう少しでOrlandoの入ったビルに近づくというところで、雨は土砂降りになってしまった。
仕方なく近くのビルの軒下で雨宿りをすることにした。
次第に雨はひどくなり、目の前もよく見えなくなる。
雨は嫌い……大嫌い。
イヤなことを思い出して……吐き気がする。
この十日間、ずっと考えないふりをしていた。
あの人のこと……
深青……そしてイトコの……『ゆうちゃん』