スーツを着た悪魔【完結】

深青に抱きしめられたまゆは、ビクッと体を震わせた。



「そうか……」



まゆの反応を「イエス」ととった深青は、そのまま彼女の首に顔を寄せる。

そっと唇を押し付けると、まゆの体から緊張が抜けた。


この反応からして、嫌われているとは思えない。

じゃあなぜ「ダメ」だというのか。


もし……にわかには信じられないが、まゆが「処女」だったら、今戸惑うのもわかるような気がしないでもない。

今まで肉体関係を持った女性の中に、誰ひとり「初めて」だという相手はいなかったが、一般的に女性が「初めてを大事にしたい」と思うことも理解できる。

まゆがそうだというのなら――



「信じてもらえるまで待つ」

「深青……」

「待つから」



いまだかつて「待った」ことなど一度もないのだが、まゆに嫌われては元も子もないのだ。

まゆが俺に抱かれてもいいと思うまで、待つしかないと、深青は決心していた。





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