スーツを着た悪魔【完結】
「もうしわけ、ありません……!」
膝小僧におでこがくっつきそうなくらい、腰を折って謝罪するまゆに、
「いや、いつものことだと、急にドアを開けた俺が悪かったんだ。すまない」
すぐに表情を営業用に戻し、礼儀正しく頼景は微笑む。
けれどまゆはプルプルと首を横に振りながら
「すぐにお茶をお持ちしますので、お待ちくださいっ……」
と、その場から駆け足で離れてしまった。
「――」
まゆの姿が完全に離れたのを確認した後、頼景はがらりと表情を変え、深青に目を向ける。
「――らしくないな」
その視線を受けて、深青も目を細めた。
「わかってる」
「――」
その男にしてはやたら澄んでいる美しい瞳を見ていると、頼景もあまり強い言葉を出せなくなる。
だが、この状況は到底受け入れられるものではなかった。