スーツを着た悪魔【完結】
深青が「まゆ」という女にハマりつつあったことは、未散からも、本人からも聞いてはいた。
その時は珍しいこともあるものだとそれほど気にはしていなかったが、これはどういうことだ。
遊びならどんな女だって構わない。
深青は普段なら決して裏をかかれるような男じゃない。少し短気なところがあるが、ギリギリのところで自分を制することが出来る男だ。
その冷静さが今まで何度も彼を救ってきたはずだ。
だがあの深青が……未だかつて見たことがない、阿呆みたいな顔をして女に抱きついていた。
ああ、信じられない。というか信じたくない……。
頼景は思わずかけていた眼鏡を外し、目頭をつまみながら問いかけた。
「――ちなみに、どういう家の女だ? 豪徳寺の名前に近づいてきたんじゃないのか」
「まゆはそんな女じゃない」
「――」
抑えてはいるが、気色ばんだ深青に押され、頼景は口ごもる。