スーツを着た悪魔【完結】
「お前が阿呆面さらしてたから、心配になったんだ」
頼景は笑顔を作って、繕うように深青の肩に手を乗せた。
「はあ? 誰が阿呆面……」
「――お待たせしました」
そこへタイミングよく、パーテンションの向こうからまゆが声を掛けてくる。
「まゆ」
深青がパッと表情を明るくして椅子から立ち上がり、彼女の手からお茶を乗せたお盆を取り上げる。
「ヨリに上等な玉露なんて飲ませなくていいんだ。生意気だからな。水道水でいい」
「そんなこと言って……」
まゆが苦笑すると、深青はとろけそうな顔でまゆを見つめる。
それを阿呆面と言わずして何というんだ……。
頼景はここに来て何度目かのため息をついた。