スーツを着た悪魔【完結】
三年たってまゆも大人になったのか。それとも、深青と過ごした短い時間が、ほんの少しだけまゆに自信を与え、彼女を強くしたのか――
とにかく、まゆは自分で自分を褒めてあげたい気分だったが、すぐに悠馬の無言の圧力に気付いて委縮せずにはいられない。
彼の切れ長の瞳は、相変わらず静かで。けれどまゆの小さな反抗も許さない雰囲気をたたえている。
まゆの心臓も不安に揺れ、ドクドクと鼓動を強めていた。
「まゆ」
「はい……」
「わかったよ」
「え……?」
「まぁ、引っ越せと言っても、まゆにだって都合はあるよね。いきなり言って悪かった」
「悠ちゃん……」
ほっと肩から力が抜ける。
「だけど僕が帰国したら、一緒に住むんだよ」
どうやら今日は「帰国」したわけではないらしい。
「帰国って……悠ちゃん、アメリカのお仕事は……? それと、奥さんは……? さっき離婚したって……本当に?」