スーツを着た悪魔【完結】
まゆの傷を知っているのは僕だけ
僕だけがまゆを許してあげられる――
物心ついた時から、おそらく万の数は聞かされた言葉。
まゆの体が無意識にぶるっと震えた。
考えることを体が拒絶する。
そうだ……。
全部悠ちゃんの言うとおり……。
悠ちゃんは私のために言ってくれてるんだから……。
「うん……」
まゆは震えながらうなずいた。
「まゆ」
悠馬はそんな様子のまゆを見つめ満足げに微笑むと、優しく名前を呼び、胸の上に置いていた手でまゆの耳の下をあやすように撫で、そのまま首の後ろに手を置き、引き寄せる。
まゆのおでこが悠馬の肩に押し付けられる。
「三年前、あの結婚式の日。僕はまゆに言ったね。二年待てって……」
青い空――
色とりどりのバルーン……
悠ちゃんの結婚式――
まゆの記憶が飛ぶ。あの日へ。
――――……