スーツを着た悪魔【完結】
悠馬の大きな手にすっぽりと収まってしまった自分の手を、不思議な気持ちで見つめるまゆ。
うんと小さいころ、私が近所の男の子たちにいじめられて泣いていたら、悠ちゃん時々こうやって私を連れ出してくれたっけ……。
悠ちゃんは泣いてばかりのまゆにいつもこう言ってくれた。
『まゆ、あんなヤツの言うことなんか気にしてはダメだよ』って。
『僕だけはまゆの味方だからね』って……。
こうすると昔と何も変わらないと思いつつも――
18歳のまゆと、28歳の悠馬。
成長した二人は幼いころとは違うはずだ。
そもそも彼は今日結婚するのに、私と手を繋いで歩くなんて、いいんだろうか?
ほんの少し後ろめたさを感じたまゆは、繋いだ手を持てあましていたが、悠馬はそんなことをまったく意識していないようだった。
「悠ちゃん……?」