スーツを着た悪魔【完結】
「一度しておけば、その後は放っておいてもらえるだろうしね。ここ一年本当にうるさかったから……それだけだよ」
悠馬は憂鬱そうにため息をつき、そしてまゆを見上げた。
「二年したら帰ってくる」
「待って、悠ちゃん……」
「まゆは本当は生きていてはいけない存在だ」
「っ……」
悠馬の言葉に、まゆの体が震える。
「わかっているだろう?」
「――うん……」
「だから僕がそばにいてあげる」
「悠ちゃん……っ」
「僕がそばにいて、まゆを許し続けてあげる」
にっこりと微笑む悠馬は、ひざまずいたまま、まゆの頬の上を指でなぞる。
いつの間にか、本人も気づかないうちに、黒い瞳から涙が溢れ、頬を伝っていた。
体がガクガクと震える。
手足から血の気が引き、氷のように冷たくなった。
立っていられるのが不思議なくらいだった。