スーツを着た悪魔【完結】
「ゆうちゃ……苦しい……っ……ひっ、うっ……」
自分の声が恐ろしく遠くから聞こえる。
まるで底なしの湖の中に漂っているかのようだった。
「そうだね、苦しいね。まゆ。かわいそうに……」
悠馬は優しく穏やかに言葉を続け、肩を震わせて泣き続けるまゆを慰める。
「僕がいる。だから、他人に迷惑をかけようなんて、幸せにしてもらおうなんて、決して思っちゃだめだよ」
決して幸せになってはいけない――
幼いころからささやき続けられた悠馬の言葉は、まゆを縛る鎖だった。
そして彼はまゆの前で偽りの結婚式をあげた。
彼の瞳はいつだって、まゆ一人に向けられていた――。
――――……