スーツを着た悪魔【完結】
それでもあなたを
――――……
「覚えてるよ、悠ちゃん」
三年ぶりに帰ってきた悠馬に現実を突き付けられたまゆ。
おしつけられたままの悠馬の体から後ずさり、うっすらと笑う。
悠ちゃんはいつだって、私に教えてくれる。
夢を見るなって……。
お前に幸せになる権利はないんだって。
昔から、優しいはずの悠ちゃんのことを時々怖いと感じるのは、きっとそれが真実だからだ。
悠ちゃんはなにも悪くない。
悪いのは私。
悠ちゃんは優しさで言ってくれてる。
「お父さんとお母さんが死んだとき、一緒に死ぬべきだった。叔父さんたちも、メミちゃんも、近所の人も、学校のお友達も、みんなそう思ってる。
私を許してくれるのは悠ちゃんだけ……だよね……」
本当は生きててはいけない私。
優しい悠ちゃんだけが、自分を許してくれる。