スーツを着た悪魔【完結】
「裏に僕の私用の携帯の番号が書いてあるから、登録しておきなさい」
「うん」
名刺を受け取ると、悠馬は立ち上がり、玄関へと向かう。
「おやすみ、まゆ。早く一緒に住めるのを楽しみにしてるよ」
「――おやすみなさい」
悠馬を見送ったまゆは、その場にぺたりと座り込む。
深青と別れた夜に、悠馬と再会した。
人生というのは自然に、水が流れるように、なるようになる、ということだ。
自分は人を幸せになどできない。
不幸にしかできない。
ちゃんと深青とお別れしよう。
せめて……
初めて好きになった人だもの。
ちゃんと、話を……
ああ、違う!
話なんかしちゃだめだ。
嫌われたまま離れたほうがいい。
未練を残さないまま彼と別れられる自信がない……。