スーツを着た悪魔【完結】
週末を一人で過ごした月曜日。
まゆはいつもより念入りに身支度を整えて、Orlandoへと向かった。
近いうちに首になるんだろうけど……当然だ。
だけど社員でいる間は、ちゃんとお仕事頑張ろう。
「おはようございます!」
精一杯明るく挨拶をして事務所に入ると、
「おはよう、澤田さん。あ、さっき社長から連絡があったのよ、おつかい頼まれてくれる?」
阿部が一通の封筒をまゆに差し出してきた。
受け取った封筒はずっしりと重い。
「シャンテっていう、シューズメーカーよ。社長のご実家ね」
「――はい。すぐに向かいます」
すると
「まゆちゃん、俺もシャンテに今から行くんだ。一緒に行こうよ」
と、平田が声を掛けてきた。
彼はまゆが入ってきた初日から彼女を一目で気に入っていて、何かと誘ってくる男だ。深青とまゆの関係は秘密だったので、いまだにこうやって迫ってくる。