スーツを着た悪魔【完結】
それからまゆと深青は、表向きはただの秘書と社長のように過ごしている。
一方電話番号を交換した未散とは何度かメールをやり取りをし、お茶をしようと誘われていたが、お互いの都合がつかず、それはなかなか叶わなかった。
「リスト、ここに置いておきますね」
まゆがデスクの上にプリントアウトされた書類を置いても、以前のように触れてこないどころか、顔もあげない。
「――失礼します」
「ありがとうございます」
無視されているわけではない。ただ、誰にでも見せるあの優等生な深青でしか接してこない。
最初の数日は、深青の意図がつかめず、いったいどういうことだろうと不審がっていたまゆだったが、二週間もすると、自分はきっと深青に呆れられたのだろうと、そう判断していた。
けれどそれはまゆには、とても切ない事実で。
諦めないって言ったくせに……
思わずそんなことを考えてしまう。