スーツを着た悪魔【完結】
しょんぼり顔といっても、それは人好きで人懐っこい平田の、お決まりのポーズだったのだが――
元来人とあまり接してこないできたまゆにとって、誰かをガッカリさせたりするのはかなり恐ろしいと言うか、気を使うことだった。
いつもなら阿部あたりがさらりと間に入ってきて、上手にまゆを助けてくれるのだが……今日はおつかいで外に出ているようでまゆ一人では断りきれない。
「そんなつもりはないんですけど……」
「じゃ、約束ね」
まゆが真面目に断ろうとしているのを、平田はさらりとかわし、結局ごり押しで約束を取り付けてしまった。
「はぁ……」
思わず深くため息をつく。
とりあえず一度食事に行っておけばもうしつこく誘われることもないだろうと、自分を慰めてはみたが、平田という男のこの少し軽薄な感じが苦手で、彼と二人きりになることを考えると、憂鬱でしかない。