スーツを着た悪魔【完結】

まゆは体を強張らせながら、平田の体を押し返そうとしたその瞬間

「んが……」

平田はあくびのような声をあげ、そのままずるずるとあおむけに横になってしまった。



「――平田さん?」



まるで急に気を失ったみたいに見える。


驚いてまゆがその顔を見下ろすと

「酔っぱらって寝てしまったみたいですね」

と、深青がまゆの後ろから顔を近づけてきた。



「そう、なんですか……? さっきまで元気そうだったのに」

「きっと疲れてるんでしょう。彼はよく動いてますから」



にっこりと笑う深青に、それ以上何も言えなくなったまゆだったが――

それよりも、耳の後ろまで体を寄せられて、ささやかれたことが妙に恥ずかしく、逃げるようにうつむいてしまった。


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