スーツを着た悪魔【完結】

豪徳寺家当主


京都駅で新幹線を降り、改札を出る二人。


ここが京都……


近代的な駅の構内にほうっとため息をつきながら、感極まったようにつぶやく。



「私、京都に来るの初めて……」

「本当に? へえ……だったら観光でもするか?」

「え!? いえいえ、結構です。こうやって来れただけで、十分ですから……」



首を横に振って、うつむいた。


中学校の修学旅行の定番と言えば、京都・奈良。

まゆもそうだったのだが、修学旅行には参加させてもらえなかったので、京都に来るのは初めてだった。

今回の出張が決まった時も、仕事なのだから観光出来るとは微塵も思わなかったが、憧れの京都の空気に触れられるだけで、まゆにとっては感激もので。

深青が眠っている間、ドキドキしながら新幹線の外を眺め、今夜はちゃんと眠れるだろうかと不安な気持ちさえ抱いていた。


< 326 / 569 >

この作品をシェア

pagetop