スーツを着た悪魔【完結】
京都の夜
会合を終えた深青は、別室にいたまゆを伴って料亭をあとにした。
ちなみに本来ならば、この後Orlandoが参加している展示会に顔を出す予定だったのだが、豪徳寺家の会合の時間が押してしまったため、深青は参加することが出来なくなったのだ。
「そっちは別の人間に行かせた。夜のパーティーにだけ、ちょっとだけ顔を出すことにする」
「はい」
「――お前も来るんだぞ? ちゃんとそれなりの格好できるように用意してきたか?」
「――はい」
ハイヤーの中でうなずくまゆ。話は聞いているようだが、どこか魂が抜けたような顔をしている。
いつものまゆなら目くじらを立てるに違いない、深青のちょっとした挑発も右から左のようだ。
「ああ……お前、当主に魅入られてるな」
意識をこちらに向かせるため、隣に座ったまゆの膝の上に手を置く。
「え……?」