スーツを着た悪魔【完結】
次の瞬間、一瞬無口になった携帯の向こうから、ひどい罵声が響き始めた。
それまでしおらしく深青の機嫌をとろうとしていたのが嘘のようだ。
これがあの女の『本当の姿』なんだろう。
本当俺は『女を見る目』がないな。
いや、たまにはこういうこともあるか……。
世の女のたいていはこんなもんだ。
宝石のような女など、そういない。
罵声を右から左に受け流しつつ、そんなことを思いながら、通話を一方的に切り、そのまま電源を落とす深青。
どうして携帯の番号を知ったのか、最初に聞いておくべきだったな。
もしかして俺の携帯番号、どっかで売られてる?
まさかなー。
いや、あのムッツリに見せて案外いたずら好きな頼景ならあり得ないこともない。
あとで連絡して聞いてみるか……。
そして部屋に戻ろうと数歩歩いたところで、深青は廊下の端に棒のように硬直して突っ立っている女に気が付いた。