スーツを着た悪魔【完結】
しつこい深青に、仕方なくローストビーフを一口くちに運んだが、飲みこむのにとても時間がかかってしまった。
「お前もっと食わなきゃダメだぞ」
「普段はちゃんと食べてます」
「何を?」
一瞬口ごもったまゆだったが
「……食パンとか……」
嘘はつけなかった。
案の定呆れる深青。
「おい。バランスよく食わなきゃ駄目だろ」
「そ、そういう深青だって、あんまり家じゃ食べないじゃない。全部外食もよくないんだよ」
ダイニングテーブルがないからと、二人でキッチンで並んで食べたことを思い出す。
「一人じゃ味気ないからな」
そう言って、ふと深青はいいことを思いついたといわんばかりに、目を輝かせた。