スーツを着た悪魔【完結】
深青と京都へ行くことは、仕事だと何度も自分に言い聞かせてここに来たのだから。
「まぁ、素の俺は短気だし……まゆのことを絶対に傷つけないって思っても、へまやらかさないとも限らないが……。それでもこれから先、まゆが笑えるような思い出、俺が死ぬほど作るって決めた」
「深青……」
「だから、もう、一人になるなよ。俺がいる」
深青の真摯な言葉、眼差しが突き刺さる。
誰だって嫌われるのは嫌だ。悪く思われたくない。
普通は私なんて面倒になって当然なのに……
だけどこうやって、彼はかたくなな私に一歩ずつ歩み寄ろうとしてくれている。
幸せになんかなれない。
誰にも好かれなくていい。
傷つけられるくらいなら、無視されていい。ずっと一人がいい、一人でいいと思っていたけれど。